2026.7.30

『FISC安全対策基準』から考える盤石なシステム設計とは?—セキュリティと業務を両立するシステム開発

こんにちは!シー・エス・エスのマーケティング担当・神子です。

私たちシー・エス・エスは、1976年の創業から50年、証券システムの開発を事業の基盤として歩んできました。有価証券や膨大な顧客資産を扱う証券システムでは、確実なリスク管理と高い安全性が求められます。
その基準となる業界ルールが「FISC安全対策基準」です。

これを聞いて、証券業界の専門的なルールなんて自社には関係ないと思われるかもしれません。でも、実はそうではないんです。長年、開発の現場に立ってきた私たちから見ると、この基準にはあらゆるビジネスのシステムに応用できる防衛のヒントがたくさん詰まっています。新しいIT技術が次々と登場し、システムづくりが複雑になっている今だからこそ、長く安全に使える設計の基本を、これからIT基盤を作ろうとされている皆様にぜひ知っていただきたい!そんな思いから、今回のテーマに選びました。

本記事では、元エンジニアである筆者の視点も交えながら、「FISC安全対策基準」をわかりやすく噛み砕き、リスクに強いシステム設計の要点をお伝えしていきます。ぜひご覧ください。

リスクに強いシステムを作るためのアプローチ

企業のあらゆる業務がIT基盤で動く現代において、システム停止や情報漏洩といったトラブルは、ビジネスの根幹や企業の信用を大きく損なう事態に直結します。

こうした事態を防ごうと考えたとき、最新のセキュリティ製品を導入するのは、多くの企業が検討するよくある対策の一つです。しかし、どれほど優れたツールを取り入れても、それだけでシステムを守り切ることはできません。

なぜなら、ツールは外部からの特定の攻撃を防ぐことには長けていますが、システムを取り巻く脅威はそれだけではないからです。具体的には、以下のように多岐にわたるリスクが存在します。

  • 外部からの脅威(不正アクセスやコンピューターウイルスなど)
  • 物理的なトラブル(機器の故障や停電、災害など)
  • 人為的なミス(誤った操作や設定のミスなど)

FISC安全対策基準』から考える盤石なシステム設計_挿絵1

本当に大切なのは、こうした多様な問題がどこに潜んでいるかをあらかじめ洗い出し、万が一トラブルが起きたときでも業務を続けられる仕組みを、設計の段階からしっかりと組み込んでおくことです。

特定の技術やツールに頼るだけでなく、日々の運用体制や物理的な設備も含めてシステム全体を俯瞰すること。このように先回りしてリスクに備え、網羅的に守りを固めていく視点と手法こそが、まさにリスクに強いシステムを作るためのアプローチとなります。

盤石な防衛網を築く「FISC安全対策基準」とは

網羅的なリスクへの備えを実践するうえで、確かな手本となるのが「FISC安全対策基準」です。

FISC(金融情報システムセンター)が定めるこの基準は、日本の金融機関がシステムを安全に運用するためのガイドラインです。現在ではその信頼性の高さから、金融業界という枠を超え、あらゆるビジネスにおける「安全対策の標準的な指標」として広く参考にされています。

この基準の最大の強みは、技術的な対策にとどまらず、システムを取り巻く環境全体を主に以下の4つの柱で多角的に守る点にあります。

  1. 統制基準(組織のルール)
    誰がシステムを管理し、どう権限を与えるのかという防衛の土台となる「体制づくり」を定めます。
  2. 実務基準(現場の運用)
    データの暗号化やバックアップなど、現場でシステムをどう動かし守るのかを定めます。
  3. 設備基準(物理的な守り)
    入退室管理や停電・災害対策など、物理的な脅威からシステムを守る環境を定めます。
  4. 監査基準(客観的な評価)
    上記の対策がルール通りに機能しているかを定期的にチェックし、見直す仕組みです。

FISC安全対策基準』から考える盤石なシステム設計_挿絵2

このように「技術・人・運用・設備」を掛け合わせて守るのが、FISC基準の基本となる考え方です。
また、最新の改定では、AIの安全対策に関する項目も盛り込まれました。

しかし、この厳格な基準を自社のシステムにすべて最高レベルで適用しようとすれば、莫大なコストと時間がかかってしまいます。そこで重要になるのが、ただルールを当てはめるのではなく、自社にとって本当に守るべきものは何かを見極める視点です。
次の章では、この基準を現実のビジネスに落とし込むために欠かせない「設計」についてお話しします。

証券システムの現場に学ぶ、「生きたセキュリティ設計」の姿

FISC安全対策基準への対応で大切なのは、ガイドラインの文字をただなぞることではありません。費用対効果を考慮して対策の優先順位を決める「リスクベースドアプローチ」の視点を持ち、現場で誰がどうデータを動かしているかというリアルな業務の流れに落とし込むことです。

例えば、システム間で重要なデータをやり取りする「データ伝送」という具体的な業務シーンで考えてみましょう。
単にデータを送受信するといっても、そのデータがどれほど重要で、いつ、どのようなルールに基づいて扱われるのかという現場のリアルな動きを把握していなければ、本当に安全な仕組みは作れません。
こうした業務への深い理解があって初めて、最適なツール選びが可能になります。

特に機密性の高いデータを扱う業務においては、FTP/SFTPなどの無料の一般的なツールではなく、「HULFT」や「InfoMover FileTransfer」といった金融分野で広く信頼されているミドルウェアを選定します。

これらが選ばれるのには、以下のような理由があります。

  • 単なるファイルの移動ではなく、転送前後の業務ジョブまで統合的に自動化が可能

  • 複雑な文字コード変換などもツール側で自動処理できる

  • 万が一のトラブル時にも、データの整合性をシステムが自律的に守る仕組みがある

これにより、送受信時のデータ暗号化から、エラー時の自動リトライ、そして稼働状況の常時監視までを含めた安全なデータ交換網を構築・監視していくことができるのです。
データを確実に守り抜く仕組みと、自動化によって現場の業務をよりスムーズに回す環境を両立させること。これこそが、ビジネスを停滞させない「生きたセキュリティ設計」のリアルな姿です。

確かな基準と深い理解が創る企業の未来

FISC安全対策基準をはじめとするセキュリティガイドラインは、現場の効率を犠牲にする「守り」の施策と捉えられがちです。しかし、基準の意図を正確に解釈し、実際の業務特性に適合させれば、安全性を高めながらビジネスのスピードを維持する運用は十分に可能です。
厳格な「確かな基準」と、現場のリアルな動きに対する「深い業務理解」
この2つを掛け合わせることで、現場に受け入れられるシステムが生まれます。ルールを守るためにビジネスを滞らせるのではなく、安全が担保されているからこそ安心して前へ進める。この攻めと守りの両立こそが、これからの企業の成長を支える強靭なビジネス基盤となります。
私たちが50年にわたり証券システムの開発で培ってきたのも、まさにこの設計力です。
株式会社シー・エス・エスはこれからも、この丁寧な設計力を大切にしながら、皆様の挑戦を支える開発業務に向き合ってまいります。

この記事の著者

プロフィール画像:神子優

神子 優(Kamiko Yu)

2016年新卒入社。結婚を機に一度退職しましたが、2025年に再入社で戻ってきました!
当時はデータ分析エンジニア、現在はマーケティング担当。

ルールって大切ですよね。ルールを守りながらも人の気持ちも尊重するのって本当に難しいです。