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【CEOインタビュー】働き方改革のその先へ、『Qube』に込めた想い

作成者: シー・エス・エス|2025.9.05

後悔から生まれた、一つの決意

私が社長に就任する前のシー・エス・エスは、今では考えられないような古い働き方の会社でした。会社が従業員に無理を強いるような環境で、社員は皆、家庭より仕事、プライベートは後回しにせざるを得ないのが当たり前でしたからね 。女性社員なんかは妊娠しているのに遠い現場に毎日通わなくてはいけなかったり、子供が産まれたり、両親の介護が必要になったら仕事を辞めるなんて選択肢しかなかったんです 。当時は皆、ただただ必死だったんだと思います。だから、きっと誰も悪気はなかったんでしょうね。私は社長の息子という立場でありながら、そんな様子を間近で見ていて、何も変える力がありませんでした。

私自身、困難な時期を過ごし、長男が生まれた時の大変な出来事を経験したことで、「家族」や「命」の尊さを心から知りました。だからこそ、社員が仕事を理由に、そんな大切なものを諦めていいはずがないと強く考えるようになりました。なぜ、もっと早く行動を起こせなかったのか。社員の幸せを置き去りにしてしまった自分に、とても強い後悔を抱きました。この後悔を胸に、社長就任後、私はすぐに働き方改革に着手することになります。社員が心身ともに健康で、安心して長く働ける環境を作りたい。その決意こそが、後に「Qube」を生み出す、最初の一歩となりました。

働き方改革のその先にあった「見えない課題」

社長就任後の最初の挑戦

その決意を胸に、社長就任後、私はすぐに働き方改革を推し進めました。まず会社全体の環境を改善しようと、「ダイバーシティ推進室」を立ち上げ、残業を抑制するための社内規定を見直しました。

勤務状況をリアルタイムで確認できるシステムを導入したり、会社全体でノートパソコンを導入したり、ペーパーレス化を進めたりと、具体的な改革を次々と実行しました。また、会議室を増設するなど、オフィス環境も改善していきました。

特に力を入れたのはリモートワークです。全社員が自宅でも会社と同じ環境で働けるよう、AWS(アマゾンウェブサービス)を通してサーバーにアクセスできる仕組みを整え、規定も作りました。しかし、当時はまだリモートワークなんてものは浸透していなかったので、社員からは「家で仕事ができるわけない」と戸惑いの声も上がっていました。そのため、東京オリンピックでの交通混雑に備えたテスト運用に留まっていたのですが、その後に訪れたコロナ禍で、この仕組みが大きな力を発揮することになりました。

改革がもたらした、新たな「無駄」

この改革は、生産性向上や残業抑制といった面で、大きな成果を生み出しました。しかし、一通りやり終えて何年か経った時、ある「無駄」がでてきたんですよね。せっかく増やした会議室が、逆に空いている時間の方が増えてしまったんです。

この時、私は「一つの会社の中で改善を進めると、今度は無駄が生まれてしまうんだな」とはっと気づかされましたね。会社として環境が良くなり、社員の働き方が効率的になった一方で、空いたリソースが無駄になってしまいました。

新たな発想、そして「Qube」の誕生へ

そんな時、世の中ではシェアリングエコノミーやサステナビリティといった考え方が広まり始めていました。これまでの「大量生産・大量消費」から、「無駄をなくし、資源をシェアする」という新しい発想に、私は強く惹かれました。

この考え方と、目の前の「無駄」が結びついたんです。うちの会社だけでなく、日本中の会社同士が協力し合い、仕事ができる環境を作れたら、どうなるだろうか。そうすれば、会社単体では生まれてしまう「無駄」をなくし、より多くの企業がもっともっと良くなるのではないか、と。

この単純な発想から生まれたのが、「Qube」でした。最初の構想では、会議室などをシェアする「MeetingRoom Q」という名前だったんですよ。多くの会社が交流し、お互いに協力し合い、共に発展していく。そんなプラットフォームを作りたいと当時から考えていました。

「つながり」から生まれる価値を、日本中に

構想の転換、そして「Qube」へ

働き方改革の先に見えた「無駄」を解決するために、私は「ミーティングルームQ」という名のシェアリングプラットフォームを作ろうと決意しました。当時はコワーキングスペースの「WeWork」なども流行っており、シェアリングという発想自体に強い可能性を感じていたからです。

しかし、開発を進めている最中にコロナ禍が世界を襲い、人に会うことや場所を借りることが困難になりました。3年ほど続いたコロナ禍によって、当初の「場所のシェア」という構想では、サービスを広げることが難しいと判断したんです。

そこで、私は戦略を大きく変更しました。軸足を「シェアリング」から「SNS」に移し、その下にシェアリング機能やイベント機能などをぶら下げる形にしたのです。入会金や月額利用料を無料にしたので、きっとたくさんの会員が増えるだろうと思っていましたが、現実は甘くありませんでした。広告費をかけても、会員は月に10人程度しか増えなかったんです。

このままではいけないと、私は自分でイベントを企画・開催し、その参加をきっかけに新規会員になってもらう作戦に切り替えました。昔から持っている約5,000枚ほどの名刺を頼りに、一人ひとりに声をかけていったんです。すると、なんと最初のイベントに100人もの方が来てくれました。コロナ禍で新たな人脈を作る機会を失っていた皆さんが、喜んでくれたんです。これをきっかけに会員数は一気に増加し、今では約2,900社にまで増えています。(2025年8月現在)

中国のスーパーアプリから着想を得た、新しいビジネスモデル

実はこの戦略の裏には、あるビジネスモデルがありました。30代半ばにGoogleの成功を見て以来、プラットフォームビジネスに興味を持っていたのですが、ちょうどその頃に出会った中国のデジタル化に関する本に、「スーパーアプリ」というものが紹介されていたんです。

その後、私は上海を訪れ、その発展の速さを目の当たりにしました。街中には電動バイクや、中国版Uberのようなライドシェアの車が走り、街にはゴミ一つ落ちていませんでした。無人の店舗や、ECと連携して効率的に商品を配送するスーパーマーケットなど、そこには日本の数年先を行くテクノロジーの姿がありました。

そして、彼らが成功した鍵が「スーパーアプリ」というビジネスモデルでした。LINEやPayPayのように、まずは無料でユーザーを増やし、その上で様々なサービスを紐づけて収益化していくんです。これは、かつて当社で1億5千万円をかけて作ったパッケージソフトが、結局1社にしか売れず、無駄になってしまった経験から、「物を作って、一度売ったら終わり」という従来のものづくりの仕組みではもうダメだと気づかされた、大きなヒントになりました。

そこでQubeは、まずは無料でコミュニティを広げ、多くの企業に集まってもらうことを最優先に考えました。そして、彼らが集まった「つながり」の中で、様々なビジネスが自然に生まれていくプラットフォームというサービス(ものづくりではない)を目指そうと決めました。

「Qube」が描く未来

Qubeは、単なるビジネスツールの開発ではありませんでした。私たちのいるIT業界なんかでは、何重にも下請けに出す多重請負構造という不健全な慣行があります。この構造では、下請けになるほど給料は低くなり、技術を活かす機会も限られてしまう。ここから発想を得てQubeは、IT業界に限らず、すべての企業が元請けとして仕事ができる環境を作り、異業種間の協力を促進したいという、そんな壮大なビジョンを形にしたものです 。企業規模や社歴に関わらず、誰もが対等に協力し合えるプラットフォームを目指しています 。

そして、かつて過酷な労働環境で苦しんだ社員が、今ではQubeの開発に携わってくれています 。彼らが長く仕事を続けられる環境を作れたことで、私は社長としてやっとひとつ、「良い仕事ができた」と思えるようになりました 。誰かが喜んでくれること、幸せになってくれること、それが自分にとっての喜びであり、そのために責任を持って取り組む。仕事は「楽しいからやっている」んです 。Qubeは、そんな私の「想い」を形にしたサービスです。

Qubeの成功は、多くの人に良い影響を与え続け、長く継続されることだと思っています 。
私たちは、仲間とともに、これからも日本の未来を変えるための挑戦を続けていきます !

※Qube運営メンバーのみんなとオフィスエントランスにて

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